益子焼という言葉は知っていても、益子の土が具体的にどのような特性を持つのか、知っている方は少ないかもしれません。益子の土は鉄分を多く含む赤土で、焼成後に温かみのある緋色と茶褐色を生み出します。この土の性質が、益子の器の色と質感の基礎になっています。
益子の土の産地と採掘 ¶
益子の土は、益子町内および周辺の丘陵地帯から採掘されます。Stonebridge Pathでは、益子町内の採掘場から直接仕入れた赤土を主体に使用しています。採掘した土はそのままでは粒が粗く、砂や石が混じっているため、水に溶かして沈殿させる「水簸(すいひ)」という工程で精製します。精製後の土は滑らかで成形しやすくなりますが、鉄分の多さは保たれます。
鉄分が焼成に与える影響 ¶
益子の赤土に含まれる鉄分は、焼成温度と雰囲気(酸化・還元)によって異なる色を生み出します。酸化焼成では鉄が酸化して赤褐色や緋色になります。還元焼成では鉄が還元されて青灰色や黒に近い色になります。薪窯では窯内の酸素量が変動するため、同じ器でも部位によって酸化と還元が混在し、複雑な色調が生まれます。
益子焼の歴史と現在 ¶
益子での陶器生産は江戸時代末期に始まりました。明治から大正にかけては日用雑器の産地として発展し、昭和初期に陶芸家の浜田庄司が益子に移住したことで、民芸運動との結びつきが深まりました。現在の益子には、大規模な窯元から個人工房まで多様な作り手がいます。Stonebridge Pathは、益子の土を使いながら、薪窯という伝統的な焼成方法を続けている工房のひとつです。
益子の土と他の産地の土の違い ¶
日本各地の陶芸産地は、それぞれ異なる土の特性を持っています。有田や波佐見の磁器土は白く、鉄分が少ないため透明感のある白磁が作れます。信楽の土は耐火性が高く、大型の器や花器に向いています。益子の赤土は鉄分が多く、灰釉や鉄釉との相性が良い反面、磁器のような白さは出ません。この特性を活かすことが、益子で作ることの意味だと考えています。
土を変えないという選択 ¶
他の産地の土を取り寄せて試したことがあります。白土を使うと、灰釉の色が全く異なる表情になります。それはそれで面白いのですが、益子の赤土と灰釉の組み合わせが持つ色の深さには及ばないと感じました。土を変えないことは、制約ではなく選択です。益子の土が持つ鉄分の多さを前提に、釉薬と焼成方法を考えることが、Stonebridge Pathの仕事の出発点になっています。
益子の土について、もっと詳しく知りたい方は工房見学も受け付けています。工房へのアクセスはお問い合わせページをご確認ください。次の薪焼成は十月を予定しています。